どうなってるのやら

あゆぽっぽ。あゆぽっぽ牛乳。

あの日、あのころ。

 前回「好みを口に出す以前にキレイ」といった言いまわしが口からこぼれました。 書体がらみの話だったと思います。 なぜ好みとキレイとを縦割り表現してしまうのかと言われれば、「キレイじゃない(≒揃ってくれない)けど好きな書体」があるからに他なりません。

 平成だかなんだかわかんなかった頃、それこそ「オギャーと、ドコモ。」の時代です。 郊外を走る市電の中で、一枚の中吊りが筆者の心をうちました。

 図柄も内容もとっくに忘れました。 でも「ふだん見てる明朝体?より水っぽい感じ」だけが、あたまの中へ引っかかりと波紋を作っていきました。 後にリュウミンとして、くる日もくる日も四六時中見せられるはめになった字です。 しかしこの頃は石井だの本蘭だのが現役だった時代。 おなじ明朝を使った例にお目にかかれる機会はとても少なく、筆者は「ふつうの印刷物とは違った由来の字かもしれない」と思い..ワープロ専用機のカタログをめくってみましたが見つかりません。 出力例はもちろん、展開される売り文句そのものにさえ..'その明朝体'が使われていないのです。

 ..あれはなんだったのか。 ひとつの答えはワープロじゃなく、パソコン売場で見つかりました。 困ったことに植字マシンやMacintoshじゃなく、PC-PR602PS(LEDアレイプリンタ?)の印字サンプルで..

 かくして。

 名前のよくわからない書体は、あゆぽっぽの中で「602PSの字」として魅惑系ノイズを発し続けることになりました。 後継機PC-PR3000PSのカタログも取り寄せましたが、『その字』は消えうせていて見当たりません。 このあと筆者が、EPSONレーザーのカタログにて「リュウミン」なる名称を知るのは数年後になります。

 リュウミンを知ることができたのも、リュウミンを買うことができたのも自分的には幸せです。 ところがこのリュウミン、何となく組んで違和感なく揃うかと言われれば不安感を拭えません。 石井風の水っぽさは表現できても、石井クォリティの確保はできなかった?のでしょう。 游明朝を即席ワープロ組みする方が、よっっっぽどガタツキは少ないです..

 と、いうわけで。

 揃い感or読みやすさだけを重視するなら、リュウミンを手に取ることをためらう現場職人さんもいらっしゃると思います。 KSを使えば話が変わるのかな?と思いきや、どうも小がなは大がなを小さめにデザインした「だけ」みたいで..横で組んだときの不揃い感が吹き飛ぶわけではありません(KLもKSも縦書き志向じゃないか説)。 その点を踏まえると、リュウミンは「揃わないかもだけど文脈に合う」「揃わないかもだけど好き」な時のみ出番があることになります..

 誰もが知ってるヒラギノ明朝はみずみずしさを放りなげて古めかしさを全身にまとったデザインセンスで、あれが「水のような空気のような」などと聞いてあきれるばっかです。 しかしその一方、揃いはよいので紙面づくりが仕事な方には大歓迎なのではないでしょうか。 一方游明朝は「歴史小説に合う」といった説明文が添えられることもありますが、ヒラギノが持つカスレ感を感じないため筆者としては困ったとき(→リュウミンが合わないとき)の決定打になってくれそうです..

 揃わないって意味ではキレイじゃないけど、、揃わない予感がするけど、好きな書体。
 筆者はデザイン業にも紙面制作業にも接点がなく、このため書体を手に取る際の顧客は(ほぼ)100%あゆぽっぽ自身です。 だから欠点をかかえていること1000%承知でリュウミンをマジLOVEできるのでした。

 ..さいきん買ったもの。 イワタ新ゴシック体L/M。。。