どうなってるのやら

あゆぽっぽ。あゆぽっぽ牛乳。

BioShock Infinite

 ..とってつけたようにタイムライン分岐だの時間軸っぽい概念を導入した本作、ひとまず二周あそんだので和訳を試してみることにしました。 自分の解釈を和訳で答え合わせするプロセスではありません。 用意された和訳がfandomやredditorの解釈とかけはなれていないか、答え合わせ用のリファレンスとして役に立つのかを目視で確認するほうのプロセスです。

 さいわい、ストーリー上の重要なプロットに関わる一節が開幕直後に含まれているのでコレを使用します:

  * Robert   : Because he doesn't row.
  * Rosalind : He doesn't ROW?
  * Robert   : No, he DOESN'T row.
  * Rosalind : Ah. I see what you mean.

 ↑二人は別reality上の同一人物で、少なくとも生まれた時の性別やgivenNameはvariableのようです。 しかし二人は同じテーマを研究した結果単一のrealityに同居することができており、お互いの意見は違っていても意思疎通のスピードは十分に速く、上の会話でも相当ハイペースな早口で「I see」へたどりつきます。

 そうするとRosalindLuteceは何をseeできたのでしょうか。 あゆぽっぽが訳すならこんなふうになります(尺の長さ等は考えてません)

  * Robert 「いや、bookerは漕がないよ。 漕ぐわけがない」
  * Rosalind「漕がない理由がある? ボートも漕げない、とか?」
  * Robert 「そうじゃない、『いまここでは』『絶対に』『漕ぐはずがない』ってことさ」
  * Rosalind「ぁぁそっか、そういうことね」

 ▲プレーヤーの動かすbookerは、comstockのもくろむニューヨーク爆撃を阻止すべくlutecesの送りこむ刺客:第123弾です。 何度も何度もbookerをアシストした上の経験から、robertLuteceは「bookerは灯台行きのボート上で決して自分からオールを漕ごうとしなかった」ことをconstantとして認識しており、今回のbooker#123がボートを漕ぐ可能性もゼロだと考えています。 rosalindは「he DOESN'T row」といった表現を聞き、"今回の123号に限らず、bookerが灯台行ボートを漕がない事象は不変"というrobertの考えをくみ取る一節なのですが..

 このシーンは二周め以降で「ああなるほど!」とプレーヤーが手を打つための重要な一節です。 しかし日本語リソースではhe doesn't rowと繰り返される会話の展開を、軽いジョークの一種だと思い込んでしまったために「沈黙」だの「沈没」だの韻を踏むスチャラカ脚本。 ここを訳せないとなれば、重要なニュアンスを知らないうちに落とすor思い違いする翻訳の可能性が高く、少なくとも原語を2周3周遊んだくらいで和訳に手を出すべきではないのでしょう。

 本作に限った話ではありませんが、海外作品を理解する命綱は原語の脚本にあります。 翻訳で遊ぶなら原語レベルの予備知識を身につけた上で、クオリティを常に疑いながらプレイするのがよいと思います。 いつものことですね。